自然派フライフィッシャーの田渕義雄氏が、1/30に亡くなられたのを、遅れて今知った。76歳での若い逝去であった。とても寂しい気持ちである。私が30数年前にフライフィッシングをやるきっかけになったのも彼の著書「ザ・フライフィッシング」(昭和62年発刊)に魅せられたためであった。

彼の本をその後、数冊読んだが、彼の渓流や自然を通してのフライフィッシングへの想いに大いに共感させられた。彼自身書いてるように、フィッシングの技術が決して上手いわけではない。その川へのそしてフライフィッシングへの考え方に魅せられるのである。
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フライフィッシングは他の釣りとは一線をがす。そのロッド、釣り方、ウェアを見ても格好良いのである。それ加え、タイイング、キャスティングが加わるからますます面白い。私には素敵、いや ”趣的” な自然とのかかわりである。彼の言葉を引用すると:

「フライロッドは不思議だ。これは特別な釣り竿だと感じる・フライロッド以外の釣り竿には、全く興味がわかない。フライフィッシングのための釣り竿が、このようなものであったからこそ、この釣りが私を惹きつけたのだ。そしてフライロッドとフライリールとフライラインとの、この絶妙なハーモニーから奏でられるフライキャスティングの、その妙なる調べの見事さはどうだ! この心地よい長さの釣り竿は、まるでオーケストラを指揮するコンダクターのタクトのようだ。これはフライロッダーの人生と水辺の自然を賛歌するシンフォニーを演奏するための、”魔法のタクト”なのである」


彼は、一日ゆっくりフライロッドを振って渓流を釣り歩く、想いをはせる、決して急がない、あせらない、その自然とのかかわりという行為自身を楽しんでいるのである。フライフィッシングをこよなく愛し、ついに40歳の時に金峰山川の畔に住居を移してしまい、自給自足的田園生活を実践していた。フライフィッシャーの他に、木工家、園芸家、作家でもあった。

今年の冬に彼を訪ね、話を聞きたいと思っていた矢先だったので、とても残念である。心よりご冥福をお祈りするとともに、氏の想いだけは、受け継ぎたいと思っている。
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出典:田渕義雄エッセイ「君がいなければ生きていけない」